夢の終わりに

第 24 話


「言葉で教えるより体で教えた方が確実なのに」
「まだ言うのかよ。お前、それ犯罪だから!絶対に駄目だからな!」

何なんだよそのぶっ飛んだ考えは。
言葉で教えて駄目なら、そういう事件関係の資料を見せてとか、自分がそういう対象なんだと理由も含めて説明するとか、普通はそっちだろう。こいつ、誠実で優しそうに見えるけど、内側は結構やばい奴なんじゃないのか?
やっぱりスザクとは似てるけど別人だもんな。軍人だったり騎士だったりしたあいつと同じに考えちゃ駄目だ。

「・・・わかったよ」

スザクはベッドから腰をあげると、渋々服を着始めた。
・・・は~~~~~っ、よかった。幸いにも今回は話してわってくれたが、次はどうなるかわからない。一時的とはいえ俺はルルーシュの保護者だからな。二人のやり取りには注意しよう。
さてさて。次は元凶のルルーシュだ。
俺たちの話の内容がいまいちわかってないルルーシュに、俺は目を合わせた。あいつも恋愛には鈍かったよなと思い出す。顔もよくてモテモテなのにと思ったが、ナナリーとロロがいて、スザクもいたからあいつは精神的に満たされていただろうし、あんな事もしてたんだから恋愛する余裕は無かったのかもしれない。シャーリーがルルーシュのことを好きだっていうのも誰が見たってバレバレだったのに、結構長いことルルーシュは気づいてなかったみたいだしな。
そんなとこまで似なくていいのにと、俺はため息を零す。

「先に言うが、俺がこれから言う事に怒るなよ」
「それは解らないな。内容によっては腹を立てるだろう」
「お前の為に言うんだから、怒るな。そしてちゃんと理解しろ」
「なんだ?俺に物を教えるつもりか?まるで俺が何も解っていないようなその口ぶり、喧嘩を売っているのか?」
「売ってない。俺たちは、お前が心配なんだよ」

そういうと、ルルーシュは口をつぐんだ。
どう説明すべきか悩みながら、まずはルルーシュの容姿は女だけじゃなく男にも好まれている事。もちろん性的な意味でだ。そして、人気のない所に連れ込む目的は金品目的じゃなく体目当てな事を離したがやはり納得してくれない。

「俺は男だぞ?いいか、そういう被害にあるのは女性だ。いや、男でもないとは言わないが、圧倒的に女性が多い。それに、俺はああいう手合いに襲われたのは今回が初めてではないし、多い時には日に3度は連れ込まれる。つまり、頻度が多いんだ。男の俺を強姦しようなんて男がそんなにいる訳ないだろう。普通に考えれば、身なりがいいの旅行者が一人で歩いているのを見て、金を持っていると踏んで金品を略奪するのが目的なんだ」

お前たちは考え違いをしていると、ルルーシュはくどくどと文句を言ったが、あーやっぱり理解してくれないよとこっちは胃が痛くなってきた。

「男のきみがそれだけ襲われる理由はリヴァルが言っただろ。きみは美人だから狙われるんだ。性別は関係ないし、女性なら身の安全を考えてあんな裏道に入らないから、彼らから見たらきみはネギを背負ったカモなんだよ」

ネギ?かも?よく解らないが、ルルーシュは不愉快そうに眉を寄せたから通じているらしい。日本の言葉か?うーんわからん。

「俺はそんなに美人じゃない。普通だし、俺程度が襲われるなら、旅行者の若い男は常に襲われている事になるだろう。あり得ないな」
「あり得ないのはきみの美的感覚だ」
「悪いルルーシュ、お前が普通とか言われたら俺立ち直れないわ」
「何を言ってるんだ。お前とさほど変わらないだろう」
「そーだな、目が二つに口が一つに鼻が一つで同じだが、造形が違うだろ。ほらよく見ろ。俺とスザクとじゃ、スザクの方がカッコイイだろ?それと同じで、お前はとんでもなく美形なの。男だって事が無意味になっちゃうレベルなの」

あーなんで俺はこんな自分にグサグサくる言葉を言ってるんだ?くっそ、美形二人が羨ましいぜ。・・・あールルーシュは羨ましくないな、美女ならともかく俺は野郎に襲われたくない。ほどほどの美形になりたい人生だた。

「・・・確かにスザクはカッコイイが」
「え?あ、ありがとう」

おい、頬染めるなスザク。本気で隔離するぞ馬鹿。

「俺はそこまで美形じゃないだろう」

恐ろしい事をいうなよ。もしかして自分の顔見慣れ過ぎて感覚鈍ってんのか?

「ところでルルーシュの母親は普通の顔立ちだったのか?」

攻撃の方向を変えてみる。子は親に似るわけだし、両親どちらかが美形だった可能性が高い。1/2の確率に俺は賭けた。

「母さんはとても美しい女性だった」

母さんが普通?ありえない!と、ルルーシュは即答した。

「ルルーシュって、父親似?母親似?」
「母だ」

即答。父親になど似てたまるかと言わんばかりの形相で、これは父親との中が悪そうだと感じた。しかし、そこまで即答するのに自分を普通ってよく言えたな。

「ってことはだ。美人のお母さんに似てるんだから、ルルーシュも美人ってことだろ?」

そこまで聞いて、ルルーシュはようやくハッとなった。まじかよ鈍感すぎだろ。美人似なら美人だろ。まあいい。今気づけたなら良し。

「よしよし。やっとわかってくれたみたいだが、お前は母親似のものすっごい美形というか美人で、その辺の男たちはお前の体を性的な意味で狙っているし、そのために裏路地に連れ込まれているのであって、金品目的ではありません!おまえは、へたすりゃそのまま誘拐されて監禁、人身売買だって十分ありえるぜ?洒落にならないっての」

まだ疑う気持ちがあるのか、信じられないって目で睨んでくるけど、ここで負けたら駄目だ。すっごい怖いけど、頑張れ俺。

「・・・だからさ、実践しようかルルーシュ?男に襲われたら実感するでしょ?僕が相手するからさ」

おいおいおいおい。いいからお前は出てくるな。どうして体で教えようとするんだやめてくれ。

「それ以上言ったら、本気で怒るからなスザク」

コードの力をフルに使えばスザクにも負けることはないだろう。本気になれば俺だってやれるんだぞ?と、殺すぞ?ぐらいの気持ちで言うと、スザクは再び口を閉ざした。
何かこいつホント性格に問題ありだな。
ここまで話して納得してくれないルルーシュも問題だが。
問題児二人を抱え、俺は再度ルルーシュは美人で男もそう言う意味で狙うんだと説明を続けると、納得はしていないようだが、とりあえず分かってくれた。最終的には「リヴァルとスザクはこんなことで俺を騙して楽しまない」という理由だったが、それでもいいとほっと息を吐いた。
ワインを開け、チーズをつまみながら話したが、味なんてさっぱり解らなかった。高級ワインだったらしいからちょっと勿体ないなと思ったが、この問題児二人を抱えて素面で話すのは辛かったから助かった。

「つまり、今まであいつらは俺を女性のような視線で見てきた訳か。男同士の恋愛を否定はしないが、やはり理解はできないな」

男と女が愛し合うことで新たな命を授かる。それが種の保存、性愛の根源だから、同性同士で恋愛する意味が解らないらしい。
おそらく俺はこの世界で一番古い人間だけど、今どき同性の恋愛は珍しくないことぐらい知ってる。俺が若かった頃と違って医学の進歩のおかげで女性同士なら子供を作れるところまで来ていて、男同士はまだ動物実験段階で問題も山積みらしいが、そのうち可能になると言われている。
そんな時代の若者にしては種の保存は異性同士でっていうのは考えが古いと言うかなんというか。・・・まぁ俺も男に言い寄られた経験もそれなりにあり、はっきり言って虫唾が走ったので、他人の同性愛は理解できても、自分が絡んだ同性愛は理解できないかもしれない。うーん、これはなかなか難しい問題だ。

「きみに理解できなくても、周りはそう見てるんだよ。だからちゃんと警戒してよ」
「そうだな、俺も男に組み敷かれるなど考えたくもない」

今まで襲ってきた犯罪者を思い出したのか、ルルーシュはものすごく不愉快そうな・・・いや、吐きそうな顔をしていた。まあ、気持ちはわかる。俺も吐きそうになった経験あるからな。ショックイメージ使えてよかった!って何度思ったかわからない。

「わかってくれてうれしいよ」

釈然としないようだが、スザクもそれ以上は言わなかった。

「そういえば、体に教え込むというのは、スザクが俺を強姦するという意味だったのか?」

あ、そこに触れてきますか。
その発言をしたスザクは困惑した表情で目をそらした。
まあ、後ろめたいですよねそうですよね。なーんもわかってないお子様を力づくで教育しようなんて馬鹿な事しようとしたんですからね。これに反省してあんな発言するのやめろよな。

「あー、ルルーシュさん。一応言っておくけど、スザクは悪気は全くなかったからな。そのぐらい荒療治が必要なんじゃないかって話なだけで、お前を傷つけようとか、そういうのは」

どう説明すればいいのか。俺はこの奇跡的な出会いをここで失いたくなくて、慌てて弁解をした。すると、ルルーシュはキョトンとした顔のあと笑った。
「そんなに慌てなくても分かってる。スザクがそんなことするはず無いじゃないか」

後光が差しているかのような純粋な笑み。出会ってまだ数時間だというのに絶対的な信頼を寄せてくれているのだと解る姿に後光が差して見えた。 これに大打撃を受けたのはスザクだ。こんな純真無垢な笑みを向けてきたルルーシュに手を出そうとしていた自分の言動を猛省していたので、今後スザクがルルーシュにな気かをする確率はほぼなくなったと言える。
こうして天然暴君は無意識のうちに暴走騎士を押えこみ、手なずけたのであった。

まあ、ここまでが俺たち三人の出会いだ。
この後ようやく水嵩が減った川を船で渡り、本来ならそこで全員お別れのはずだったが、ルルーシュが目指している場所が辺境で、自然が生み出した絶景を見れるとかいう場所だったが、その周辺はとても治安が悪い場所だと知り、俺とスザクが同行することになったのだった。

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